2021年7月に開催の展覧会&パフォーマンス「Autoplay and Autopsy」に向けて、その会場であるUrBANGUILD(以下Ur)と私の関係のことを書いてみる。自分のこのWEBサイトでアーカイブにUrの名前が初めて出るのは2008年5月だけれど、厳密にはもう少し前に出ているはず。若い時のバンド名は大層恥ずかしいものだが、チェルシーホテルというバンドをやっていて、確かそれで2008年5月以前にUrに出ているはず。そのときの自分にとってUrは大きな、敷居の高そうな場所で、オーナーの次郎さんから誘われたとき、とても嬉しいのと同時に恐る恐る出させて貰った気がする(二十歳そこらの人間にはUrはかなり大人な場所に思った)。それと僕のバンド(オリジナル曲をするバンドという意味で)での初めてライブはUrの前身(といってよいのかな)のCAFEアンデパンダンだったので、もしかしたら2005年くらいには次郎さんにも既に会っていたのかもしれない(最初のライブ共演がOren Ambarchi、BusRatch + Aki Ondaなのは今でも軽く自慢したいことです)。
ただ最初にUr出たきっかけが何だったかは覚えていない。今もバンドシーンはそういうことしてるのか不明だけど、自分が大学生だった2004年~2008年くらいは会場にデモを持っていったりして出演を直談判したものだった。デモをUrに持っていったのかは覚えていないが、そうやって関西で難波BEARSやBRIDGE、cocoroomなどにも録音した音源を持っていって、その後ライブをさせて貰った。またcocoroomではCDを渡すためにそのときブッキングだったアサダワタルさんに会うためにライブを見に行ったことを覚えている。たしかアサダさんと藤本由紀夫さんのライブだったはず。アサダさんとはそのとき以来の付き合いだし、今後もいろいろと一緒にすることがある。またそのあとcocoroomで対バンした米子匡司さんも今回の企画のパフォーマンスで共演してくれる。なんにせよありがたいことに今ここにも継続している歴史がある。
※2010年くらいの私@Ur
Photos by Hidetoshi Tani(写真はhttp://cb.problematica.info/ より拝借しています)
アーカイブから2008年くらいからのUrでのライブの本数をざっと数えてみたけれど、大体120本は少なくてもやっていて、これは自分が一番多く演奏したところであることは間違いない。自分もここまでいろんな場所でライブをしてきて思うけれど、場所がヒトを形成するところがあって、そういう意味では僕の一部はUrの環境や空気、響きによって作られてきたところがある。ライブ中はもちろんだけど、ライブ前後の時間=ライブ終了後恐る恐るフロアに降りてドリンクを頼んだり、また今ちょっとご無沙汰してしまっているけれど、PAの茂一さんと夜中まで意味があったりなかったりする話をしたり(みんな酔っていく中で私は大体シラフ)、クソみたいなライブをしたと自分では思ってイベント終了後に速攻帰ったり、共演の人がめちゃくちゃ良かったのにさして話せなかったり、上演中に辛辣な批評をtwitterに上げたり、またRyotaroさんやカウンターの辻さんをはじめスタッフのみなさんと話したり、たまにいる次郎さんに会釈をしたりしてきた(最近は少し話せるようになって嬉しい)。またパフォーマンスでは酷いのだと、料理のサラダを焼いたり(パフォーマンスの一部で)、10時間ソロライブをしてみたりしたこともある。ここにきてここから帰る時間をたくさん過ごしてきた。また今回の展覧会で駆動させる壊れたチェロの自動演奏装置についても、このチェロを壊してしまったのもここUrででした。
※2010年くらいの壊れる前の自動演奏チェロ@Ur
Photos by Hidetoshi Tani(写真はhttp://cb.problematica.info/ より拝借しています)
(みていてこのころはまだ傷が少ないなと思いました・・・)
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今、自分は18歳くらいまで過ごした三重と京都を往復する生活をしていることもあり、その移動の最中に「環境」ということをよく考えたりしている(この展覧会が「環境」ということを考えた上で出来ていることは展覧会のパンフレットにも記載するつもり)。勿論この企画は、今「環境」というと想像されるような「エコロジー」や「エシカル」みたいなものとはほとんど関係無いけれども、ここでいう「環境」とは、すごく簡単にいうと今の状況下で音の鳴る場のことを指しています(今自分はそれを探しています)。今回このイベントで音や存在としてあるのは、私の演奏、壊れるチェロの自動演奏や謎の日曜大工的駆動物、また2005年くらいから録音しているフィールドレコーディング、また場としてあるのはUrBANGUILDということになり、これらすべてのことをある意味では作曲要素として念頭に置き、展覧会やパフォーマンスが行われます。
また自分の三重の家は四方八方が田んぼ/畑なのだけど、そこで見える、聴こえる風景に大きな変化がないことに非常に救われているところがあり(このことでフィールド及びフィールドレコーディングということへの思考が自分の中で少し変わった部分があり、そのことも別項で書こうと思っている)、そしてUrが15年存在してくれていることも同じようなところがあります。Urが自分に開いて/許してくれた振る舞いや実験(この言葉は今はあまり好きではないけれど)は音楽・演奏家としての私の「生態」を確保してくれました。
※2020年11月の山月記のときに小菅さんが撮ってくれたUrの壁の写真。現在の壁の壁画は別のものになっていて、それは是非現場でみてください(とても素敵だと思います)。また今回はこの壁の前にも作品が置かれるし、この壁を観る時間というのも積極的に展示に組み込んでいきたいと思っています。
そういった場所で今回自分の展覧会とパフォーマンスをする。このイベントは2つの側面があって、1つはこれまでずっとやってきたUrでの自分の演奏行為を主体としたパフォーマンスを再び、5日間続けて。そしてもう1つは壊れたチェロにつけられたパーツが自動で駆動したり、照明が自動で切り替わったり、スピーカーから独りでに音が再生されるなどなどの無人のサウンドインスタレーションというもの。これらを昼間~夜にかけてUrで展開します。
敬愛するthis heatなどのチャールズヘイワードがUrに来た際、「この場所が何を大切にしているか入った瞬間にわかった」的なことを言っておられた話を聴いたことがありますが、僕も同じようなことを感じてここまできました。また次郎さんや辻さんやRyotaroさんの気骨のようなものをこの場所には感じるし(事実このような状態でもお店を存続してくれている)、その場所に応えるものを今回もこの場所に創り出したいと思っています。ということでご来場お待ちしています。
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中川裕貴「Autoplay and Autopsy」~ 展覧会&パフォーマンス
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